LaTeXの原稿は,文書の種類や設定を書く部分と,実際の文章を書く部分に分かれています.基本の形を知っておくと,テンプレートを読み解いたり,必要な設定を追加したりしやすくなります.この記事では,日本語を含む文書の例を使って,それぞれの部分の役割を見ていきます.
まずは全体像を確認
LaTeXの文書は,おおむね次の順に書きます.
\documentclass{文書クラス}
設定を書く部分(プリアンブル)
\begin{document}
本文を書く部分
\end{document}
プリアンブルは,文書の設定を書く場所です.\begin{document}から\end{document}までが本文です.この2つの命令で本文の開始と終了を示す形は,LaTeX文書の基本になります.LaTeX2e for authors
日本語の文書で使える一通りの例
次の例は,タイトルと節を含む短い文書です.LuaLaTeXでコンパイルすることを想定し,日本語組版に対応したltjsarticleクラスを使っています.ltjsarticleなどのクラスはLuaTeX-jaが提供する日本語文書用クラスです.CTAN:LuaTeX-ja
\documentclass[a4paper,11pt]{ltjsarticle}
% ここからプリアンブル
\usepackage{amsmath}
\title{LaTeX文書の基本構造}
\author{著者名}
\date{\today}
\begin{document}
\maketitle
\section{はじめに}
LaTeXでは,本文中に $a^2+b^2=c^2$ のような数式を書けます.
複数行の計算は,例えば次のように記述できます.
\begin{align*}
1+2+\cdots+n
&= \frac{n(n+1)}{2}
\end{align*}
\section{おわりに}
文書クラスと本文を分けると,設定と内容を整理して管理できます.
\end{document}
この例は,文書クラスの指定,プリアンブル,本文という3つの部分に分けて読むと理解しやすくなります.amsmathは複数行の数式などを扱うためのパッケージです.CTAN:amsmath
文書クラスで文書の基本を決める
冒頭の次の命令で,文書の種類と基本設定を指定します.
\documentclass[a4paper,11pt]{ltjsarticle}
波括弧内のltjsarticleが文書クラスです.文書クラスは,ページの基本的な構成や見出しの形式などを決めます.articleは短い記事やレポート向け,reportは章を含むレポート向け,bookは書籍向けによく使われます.日本語文書では,使用するエンジンやテンプレートに対応した日本語用クラスを選びます.
角括弧内のa4paperと11ptはクラスオプションです.この例では用紙をA4判にし,本文の基本の文字サイズを11ポイントに指定しています.クラスによって利用できるクラス名やオプションは異なるため,提出先や配布テンプレートで指定がある場合は,その指定を優先してください.
プリアンブルに設定を書く
\documentclassの後から\begin{document}の前までがプリアンブルです.ここでは,パッケージの読み込みや文書の設定を行います.
\usepackage{amsmath}
\title{LaTeX文書の基本構造}
\author{著者名}
\date{\today}
\usepackage{amsmath}は,数式機能を追加する命令です.使うパッケージだけを読み込み,授業や投稿先のテンプレートに指定があれば,そちらに合わせます.
\title,\author,\dateは,タイトル,著者,日付の情報を設定します.これらを書いただけではタイトルは紙面に表示されません.本文中で\maketitleを実行すると,設定した情報がタイトルとして組版されます.日付を自分で指定する場合は,\date{2026年10月14日}のように書けます.
本文に文章や見出しを書く
\begin{document}の後に,PDFに出力したい本文を書きます.見出しには\section{...}などを使い,タイトルを表示する場合は\maketitleを本文の先頭付近に置きます.
本文中の数式は$...$で囲みます.独立した行に数式を置く場合は,次のように\[...\]で囲めます.
本文中では $a^2+b^2=c^2$ と書けます.
\[
1+2+\cdots+n=\frac{n(n+1)}{2}
\]
本文の終わりには\end{document}を書きます.\begin{document}と\end{document}は対になる命令なので,どちらか一方を書き忘れたり,名前を間違えたりしないようにします.
よくあるつまずき
\documentclassを書き忘れると,文書の基本設定が決まりません.まず原稿の先頭を確認します.\usepackageを\begin{document}より後に置くと,パッケージを読み込めないエラーになります.パッケージはプリアンブルに移します.- 日本語用クラスと異なるエンジンを選ぶと,コンパイルに失敗したり,日本語が正しく出力されなかったりする場合があります.テンプレートに指定されたコンパイル方法を確認します.
- タイトル情報を設定しても,
\maketitleがなければタイトルは表示されません.本文に命令があるか確認します.
エラーが出たときは,最初に文書クラス,プリアンブルと本文の境目,\begin{document}と\end{document}の対応を確認すると,基本的な書き間違いを見つけやすくなります.
作成するときの手順
- 提出先やテンプレートで指定された文書クラスとコンパイル方法を確認する.
\documentclassを書き,必要なパッケージやタイトル情報をプリアンブルに置く.\begin{document}と\end{document}の間に本文を書く.- コンパイルしてPDFを開き,タイトル,見出し,数式,日本語の表示を確認する.
まずは上の例を保存してコンパイルし,プリアンブルの設定を一つずつ変えて結果を見比べると,文書のどこを編集すればよいか身につきます.
まとめ
- LaTeX文書は,文書クラス,プリアンブル,本文の順に構成する.
- 文書クラスは文書の種類や基本的な体裁を決める.
- パッケージやタイトル情報などの設定は,
\begin{document}より前に書く. - 本文は
\begin{document}から始め,\end{document}で終える. - 日本語文書では,文書クラスとコンパイル方法の組み合わせをテンプレートに合わせる.
この基本形を押さえておけば,必要に応じて見出し,目次,図表,参考文献などを追加できます.次の記事では,原稿を処理してPDFなどを作るコンパイルの仕組みを説明します.
