LaTeXは,数式をきれいに書くためだけの仕組みではありません.レポートや論文,講義ノート,書籍,発表用スライドなど,構造のある文書を作成できます.見出しや数式,図表などの役割を原稿に記述し,文書クラスやパッケージの設定に沿って組版するのが基本です.LaTeXプロジェクトの紹介
作成できる文書の例
| 作りたいもの | LaTeXでできること | よく使われる機能の例 |
|---|---|---|
| レポート・論文 | 章や節を整理し,数式,図表,参考文献を含む文書にまとめる | 文書クラス,数式環境,参考文献 |
| 講義ノート・書籍 | 章立て,目次,番号,索引などを文書全体で管理する | \chapter,目次,相互参照,索引 |
| 数学の答案・教材 | 数式や定理,証明を読みやすく配置する | 数式環境,定理環境 |
| 図やグラフを含む資料 | 画像を挿入したり,図形やグラフを作成したりする | graphicx,TikZ,PGFPlots |
| 発表用スライド | 数式や図表を含むスライドを作成する | beamerクラス |
利用できる機能は,選ぶ文書クラスやパッケージによって変わります.たとえば,beamerはスライド作成用のLaTeXクラスであり,TikZはTeX上で図を描くための仕組みです.CTAN:beamer,CTAN:PGF/TikZ
文書の構造をそろえる
LaTeXでは,見出しを大きく表示する命令だけでなく,「ここは章」「ここは節」という文書の構造を記述します.その構造に基づいて,見出しの書式や番号,目次をまとめて管理できます.図表や数式にラベルを付けて本文から参照すれば,追加や並べ替えのあとも番号を更新しやすくなります.
たとえば,次のように節と数式にラベルを設定できます.参照番号を正しく反映するには,文書を複数回コンパイルする場合があります.
\section{数列の和}\label{sec:sum}
第\ref{sec:sum}節では,次の公式を使います.
\begin{equation}\label{eq:sum}
1+2+\cdots+n=\frac{n(n+1)}{2}
\end{equation}
式\ref{eq:sum}は,最初の$n$個の正の整数の和を表します.
ここでは,節と式に名前を付け,\refで番号を参照しています.番号を直接本文に書かないため,内容を変更したときの修正漏れを減らせます.
数式や数学的な文章を組版する
分数,根号,行列,積分などを,数式として読みやすい形で記述できます.本文中に入れる数式には$...$を使い,独立した行に置く数式には\[...\]を使います.複数行の式をそろえたり,定理・補題・証明に番号や見出しを付けたりすることもできます.
たとえば,本文中では $a^2+b^2=c^2$ と書き,式を独立させる場合は次のようにします.
\[
1+2+\cdots+n=\frac{n(n+1)}{2}
\]
数式の内容そのものをLaTeXが正しいか判定するわけではありません.数式の意味や計算が正しいことは,書き手が確認します.
図表や参考文献を整理する
画像を文書に挿入し,図番号や説明を付けて本文から参照できます.表も行や列の構造を指定して作成できます.図表を追加したり順番を変えたりしたときに,番号と参照を一緒に更新できるのが便利です.図の配置はページ全体の組版に応じて調整されるため,ソースに書いた位置とPDF上の位置が常に一致するとは限りません.
参考文献については,文献情報を整理し,本文中の引用と文末の一覧を作成できます.文書の種類や投稿先に指定がある場合は,指定されたクラスや参考文献の書式を使ってください.
スライドや図を作る
beamerクラスを使うと,LaTeXの原稿から発表用スライドを作れます.各スライドをフレームとして構成し,数式,箇条書き,図表などを同じ文書内で扱えます.CTAN:beamer
また,TikZを使うと,座標や線,図形などを原稿に記述して図を作成できます.PGFPlotsを組み合わせれば,関数やデータのグラフも作れます.図をソースとして管理できるので,文書の修正に合わせて図を更新しやすくなります.ただし,複雑な図では,描画方法や使うパッケージを別に学ぶ必要があります.CTAN:PGF/TikZ
実際に使うときの進め方
- 作りたい文書に合う文書クラスや配布テンプレートを選ぶ.
- 本文を章・節などの構造に分け,必要な数式や図表を加える.
- 必要な機能だけをパッケージで追加する.
- 原稿をコンパイルし,PDFで改ページや図表の位置,数式の表示を確認する.
- 内容と見た目を修正し,もう一度コンパイルする.
投稿先や授業で指定されたテンプレートがある場合は,独自に書式を作る前にその指定を確認しましょう.文書クラスやコンパイル方法がテンプレートに合っていないと,想定した見た目にならないことがあります.
まとめ
- LaTeXでは,レポート,論文,講義ノート,書籍,数学教材,スライドなどを作成できます.
- 数式だけでなく,見出し,目次,図表,番号,本文からの参照,参考文献も扱えます.
beamerでスライドを作成でき,TikZやPGFPlotsで図やグラフも作成できます.- 使える機能と出力の書式は,文書クラスやパッケージ,テンプレートによって変わります.
- まず文書の用途に合うクラスやテンプレートを選び,コンパイル後のPDFを確認しながら仕上げます.
LaTeXは,構造のある文書を一貫した書式で作り,数式や参照を含めて管理したいときに役立ちます.次の記事では,WordとLaTeXの違いを用途に沿って比較します.
