当サイトの参考文献はこちらからご参照ください.
また,記事中に誤植と思われる箇所を見つけた場合,お手数ですがお問合せフォームからご連絡していただきますと幸いです.

第36回 JMO 予選第2問

この記事では,2025年11月16日(日)に実施された,「第36回 日本数学オリンピック 予選」の第2問の解答を紹介・解説しています.解答はすべて筆者によるものであり,「公益財団法人 数学オリンピック財団」によるものではありません

問題については,以下のリンク(公益財団法人 数学オリンピック財団)から閲覧してください(問題の著作権は数学オリンピック財団に帰属します).

第2問は代数(A)の問題です.$n$が十分小さいときは
\[ [\sqrt{2026}n]=45n\]
が成り立つことが予想されます.小数部分に注目して,この等式が初めて成り立たなくなるのはどのような状況かを考えましょう.

\[ 2026=45^2+1\]
であるから,$\sqrt{2026}$はほとんど$45$である.

特に,$[\sqrt{2026}]=45$であるから,$\sqrt{2026}$の小数部分は
\[ \sqrt{2026}-45\]
である.よって
\[ \begin{aligned}[\sqrt{2026}n]&=[(45+(\sqrt{2026}-45))n]\\ &=[45n+(\sqrt{2026}-45)n]\\ &=45n+[(\sqrt{2026}-45)n]\end{aligned}\]
であるから,$n$が十分小さいとき
\[ [(\sqrt{2026}-45)n]=0\tag{$\ast$}\]
となり
\[ [\sqrt{2026}n]=45n\]
が成り立つ,すなわち$[\sqrt{2026}n]$は$n$で割りきれる.

$n$が「十分小さい」とは,具体的にどれくらい小さいのかを明らかにするのが,この問題で問われていることである.
$(\ast )$は
\[ 0\le (\sqrt{2026}-45)n<1\]
と同値であるから,この不等式が成り立つ$n$の範囲を求めてみよう.辺々を$\sqrt{2026}-45$で割ると
\[ 0\le n<\frac{1}{\sqrt{2026}-45}\]
を得る.$n$は正の整数であるから
\[ 1\le n<\frac{1}{\sqrt{2026}-45}\]
としてよい.ここで
\[ \frac{1}{\sqrt{2026}-45}=\sqrt{2026}+45\]
と有理化できるから
\[ 45<\sqrt{2026}<46\]
より
\[ 90<\sqrt{2026}+45<91\]
よって,$(\ast )$を満たす正の整数$n$の範囲は
\[ 1\le n\le 90\]
である.
したがって,$1\le n\le 90$のとき
\[ [\sqrt{2026}n]=45n\]
となり,$[\sqrt{2026}n]$は$n$で割りきれる.

一方で
\[ 1\le (\sqrt{2026}-45)n<2\]
についても同様に考えると,辺々を$\sqrt{2026}-45$で割って
\[ \frac{1}{\sqrt{2026}-45}\le n<\frac{2}{\sqrt{2026}-45}\]
有理化すると
\[ \sqrt{2026}+45\le n<2(\sqrt{2026}+45)\]
を得る.よって
\[ 90<n<182\]
であるから,特に$n=91$のとき
\[ [(\sqrt{2026}-45)n]=1\]
であることが分かる.
よって,$n=91$のとき
\[ \begin{aligned}[\sqrt{2026}n]&=45n+[(\sqrt{2026}-45)n]\\ &=45n+1\end{aligned}\]
となり,$n\neq 1$であるから,$[\sqrt{2026}n]$は$n$で割りきれない.

以上より,$n=91$が最小のものであることが分かる.

ここまでの議論を簡潔に整理すると,次のようになる.

解答

\[ 45^2=2025<2026=45^2+1<45^2+2\times 45+1=(45+1)^2=46^2\]
より
\[ 45<\sqrt{2026}<46\]
であるから
\[ \begin{aligned}[\sqrt{2026}n]&=[45n+(\sqrt{2026}-45)n]\\ &=45n+[(\sqrt{2026}-45)n]\end{aligned}\]
ここで
\[ [(\sqrt{2026}-45)n]=0\]
をみたす正の整数$n$について考える.すなわち,不等式
\[ 0\le (\sqrt{2026}-45)n<1\]
について考える.これを解くと
\[ 0\le n<\sqrt{2026}+45\]
を得る.
よって,$1\le n\le 90$のとき,$[\sqrt{2026}n]$は$n$で割りきれる.
一方
\[ [(\sqrt{2026}-45)n]=1\]
すなわち
\[ 1\le (\sqrt{2026}-45)n<2\]
を解くと
\[ \sqrt{2026}+45\le n<2(\sqrt{2026}+45)\]
を得るから,特に$n=91$のとき
\[ [\sqrt{2026}n]=45n+1\]
となり,$[\sqrt{2026}n]$は$n$で割りきれない.
したがって,$n$の最小値は$\color{red}91$である.

参考文献

  • 公益財団法人 日本数学オリンピック財団, https://www.imojp.org(最終閲覧日は当記事の最終更新日です).
タイトルとURLをコピーしました