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一般線形群と特殊線形群

一般線形群

定義1

体$K$上のベクトル空間$V$の全単射な線形変換全体の集合を$V$の一般線形群(general linear group)といい,$\mathrm{GL}(V)$で表す.

定義1は,次のように言い換えることができる.

定義2

$n\in \mathbb{N}$とする.体$K$の元を成分とする,行列式が$0$でない$n$次正方行列全体の集合を$K$の一般線形群といい,$\mathrm{GL}_n(K)$(または$\mathrm{GL}(n,K)$)で表す.

定義1と定義2の同値性を直感的に捉えてみよう.
定義1ではベクトル空間を,その次元を押し潰すことなく変換する方法全体の集合を一般線形群としている.
このような線形変換の表現行列の行列式は$0$でないから,定義2の一般線形群に帰着する.

よって,定義1における線形変換の合成,定義2における行列の積を演算として同一視するとき,一般線形群は群であることを確認しよう.

定義1の場合,写像の合成については結合法則が成り立ち,単位元は恒等変換,逆元は逆変換に対応している.

定義2の場合,行列の積については結合法則が成り立ち,単位元は単位行列,逆元は逆行列に対応している.

特殊線形群

定義3

$n\in \mathbb{N}$とする.体$K$の元を成分とする,行列式が$1$である$n$次正方行列全体の集合を$K$の特殊線形群(special linear group)といい,$\mathrm{SL}_n(K)$(または$\mathrm{SL}(n,K)$)で表す.

一般線形群と特殊線形群の違いを直感的に捉えてみよう.

一般線形群は,ベクトル空間を次元を保って変換する方法全体の集合であり,特殊線形群は一般線形群の特別な場合である.

特殊線形群では,線形変換の表現行列の行列式が$1$である条件が付いている.表現行列の行列式が$1$である線形変換は,体積と向きを保つ変換を意味する.すなわち,特殊線形群はベクトル空間を次元,体積,向きを保って変換する方法全体の集合である.

また,特殊線形群は一般線形群の部分群であることを確認しよう.

$\mathrm{SL}_n(K)\subset \mathrm{GL}_n(K)$は
\[ \mathrm{SL}_n(K)=\{ A\in \mathrm{GL}_n(K)\mid \det A=1\} \]
であり,$\mathrm{SL}_n(K)$は$\mathrm{GL}_n(K)$の部分群である.

実際,任意の$A,B\in \mathrm{SL}_n(K)$に対し
\[ \det AB^{-1}=\det A\det B^{-1}=\det A\cdot \frac{1}{\det B}=1\cdot 1=1\]
が成り立つから,$AB^{-1}\in \mathrm{SL}_n(K)$である.よって,$\mathrm{SL}_n(K)$は$\mathrm{GL}_n(K)$の部分群である.

特に,特殊線形群は一般線形群の正規部分群である.

定理1

$n\in \mathbb{N}$,$K$を体とするとき,$\mathrm{SL}_n(K)\triangleleft \mathrm{GL}_n(K)$が成り立つ.

任意の$A,B\in \mathrm{SL}_n(K)$に対し
\[ \det AB^{-1}=\det A\det B^{-1}=\det A\cdot \frac{1}{\det B}=1\cdot 1=1\]
が成り立つから,$AB^{-1}\in \mathrm{SL}_n(K)$である.よって,$\mathrm{SL}_n(K)$は$\mathrm{GL}_n(K)$の部分群である.

任意の$P\in \mathrm{SL}_n(K),Q\in \mathrm{GL}_n(K)$に対し
\[ \det QPQ^{-1}=\det Q\det P\det Q^{-1}=\det Q\cdot 1\cdot \frac{1}{\det Q}=1\]
であるから,$QPQ^{-1}\in \mathrm{SL}_n(K)$が従う.$\blacksquare$

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