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1986年度 東工大数学 第1問

問題

整数$a_n=19^n+(-1)^{n-1}2^{4n-3}\quad (n=1,2,3,\dots )$のすべてを割り切る素数を求めよ.

(1986年度 東京工業大学 第1問)

当記事で紹介する解答は東京工業大学(東京科学大学)が示した解答ではありません.

【大学入試】整数問題の解法
  • 積の形を作る:因数分解などで整数と整数の積の形を作る
    →素因数分解の一意性を利用する
  • 剰余に注目する:合同式などを用いて整数で割ったときの余りを考える
    →剰余で整数を絞り込む
  • 不等式で範囲を絞り込む:大小関係を定めて不等式を作る
    →不等式で整数を絞り込む

まずは実験して$a_n$を割り切る素数を求める.あとは合同式を使って証明していこう.

まずは実験してみよう.
\[ a_1=19^1+(-1)^{1-1}2^{4\cdot 1-3}=21=3\times 7\]
\[ a_2=19^2+(-1)^{2-1}2^{4\cdot 2-3}=329=7\times 47\]
\[ a_3=19^3+(-1)^{3-1}2^{4\cdot 3-3}=7371=3^4\times 7\times 13\]
よって,すべての$a_n$は$7$で割り切れるのではないかと予想できる.

予想は証明して初めて真の命題となる.$7$を法とする合同式を用いて証明を試みよう.
\[ \begin{aligned}19^n+(-1)^{n-1}2^{4n-3}&\equiv (-2)^n+2\cdot (-1)^{n-1}2^{4n-4}\\ &=(-2)^n+2\cdot (-16)^{n-1}\\ &\equiv (-2)^n+2\cdot (-2)^{n-1}\\ &=(-2)^n-(-2)^n=0\pmod{7}\end{aligned}\]

【復習】合同式

$m$は正の整数とする.2つの整数$a,b$について$a-b$が$m$の倍数であるとき,$a$と$b$は$m$をとして合同であるといい,式で
\[ \bm{a\equiv b\pmod{m}}\]
と表す.このような式を合同式という.

いとも簡単に解けてしまったが,もう少し深堀りすることにしよう.

解答1

難易度:★★★☆☆

\[ \begin{aligned}19^n+(-1)^{n-1}2^{4n-3}&\equiv (-2)^n+2\cdot (-1)^{n-1}2^{4n-4}\\ &=(-2)^n+2\cdot (-16)^{n-1}\\ &\equiv (-2)^n+2\cdot (-2)^{n-1}\\ &=(-2)^n-(-2)^n=0\pmod{7}\end{aligned}\]
よって,$\color{red}7$は$a_n$のすべてを割り切る素数である.

高校数学の教科書には,合同式は発展的な内容として扱われている.解答1と発想は同じだが,合同式を用いずとも証明することができる.

\[ \begin{aligned}&19^n+(-1)^{n-1}2^{4n-3}\\ =&19^n+2\cdot (-1)^{n-1}2^{4n-4}\\ =&19^n+2\cdot (-16)^{n-1}\\ =&(7\cdot 2+5)^n+2\cdot \{ 7\cdot (-3)+5\} ^{n-1}\\ =&\sum_{k=0}^{n}{}_n\mathrm{C}_k(7\cdot 2)^k5^{n-k}+2\sum_{k=0}^{n-1}{}_n\mathrm{C}_k\{ 7\cdot (-3)\} ^k5^{n-k-1}\\ =&5^n+\sum_{k=1}^{n}{}_n\mathrm{C}_k(7\cdot 2)^k5^{n-k}+2\cdot 5^{n-1}+2\sum_{k=1}^{n-1}{}_n\mathrm{C}_k\{ 7\cdot (-3)\} ^k5^{n-k-1}\\ =&7\cdot 5^{n-1}+7\cdot 2\sum_{k=1}^{n}{}_n\mathrm{C}_k14^{k-1}5^{n-k}+7\cdot 2\cdot (-3)\sum_{k=1}^{n-1}{}_n\mathrm{C}_k(-21)^{k-1}5^{n-k-1}\\ =&7\left\{ 5^{n-1}+2\sum_{k=1}^{n}{}_n\mathrm{C}_k14^{k-1}5^{n-k}+2\cdot (-3)\sum_{k=1}^{n-1}{}_n\mathrm{C}_k(-21)^{k-1}5^{n-k-1}\right\} \end{aligned}\]

少々複雑な式変形であるが,証明することはできた.

解答2

難易度:★★★☆☆

\[ \begin{aligned}&19^n+(-1)^{n-1}2^{4n-3}\\ =&19^n+2\cdot (-1)^{n-1}2^{4n-4}\\ =&19^n+2\cdot (-16)^{n-1}\\ =&(7\cdot 2+5)^n+2\cdot \{ 7\cdot (-3)+5\} ^{n-1}\\ =&\sum_{k=0}^{n}{}_n\mathrm{C}_k(7\cdot 2)^k5^{n-k}+2\sum_{k=0}^{n-1}{}_n\mathrm{C}_k\{ 7\cdot (-3)\} ^k5^{n-k-1}\\ =&5^n+\sum_{k=1}^{n}{}_n\mathrm{C}_k(7\cdot 2)^k5^{n-k}+2\cdot 5^{n-1}+2\sum_{k=1}^{n-1}{}_n\mathrm{C}_k\{ 7\cdot (-3)\} ^k5^{n-k-1}\\ =&7\cdot 5^{n-1}+7\cdot 2\sum_{k=1}^{n}{}_n\mathrm{C}_k14^{k-1}5^{n-k}+7\cdot 2\cdot (-3)\sum_{k=1}^{n-1}{}_n\mathrm{C}_k(-21)^{k-1}5^{n-k-1}\\ =&7\left\{ 5^{n-1}+2\sum_{k=1}^{n}{}_n\mathrm{C}_k14^{k-1}5^{n-k}+2\cdot (-3)\sum_{k=1}^{n-1}{}_n\mathrm{C}_k(-21)^{k-1}5^{n-k-1}\right\} \end{aligned}\]
よって,$\color{red}7$は$a_n$のすべてを割り切る素数である.

ところで本問は,すべての正の整数に関する命題であるから,$n$に関する数学的帰納法で証明することもできそうだ.

$n=1$のとき,$a_1=21$は$7$の倍数.これは明らかである.

$n=k$のとき,すなわち$a_k$が$7$の倍数であると仮定すると
\[ \begin{aligned}a_{k+1}&=19^{k+1}+(-1)^k2^{4k+1}\\ &=19^{k+1}+2\cdot (-1)^k2^{4k}\\ &=19^{k+1}+2\cdot (-16)^k\\&=19\cdot 19^k+(-16)\cdot 2\cdot (-16)^{k-1}\\ &=35\cdot 19^k+(-16)\cdot \{ 19^k+2\cdot (-16)^{k-1}\} \\ &=7\cdot 5\cdot 19^k-16a_k\end{aligned}\]
よって,$a_{k+1}$も$7$の倍数である.

式変形に少し工夫が必要だが,示すことはできた.

解答3

難易度:★★★☆☆

すべての$a_n$が$7$の倍数であることを,$n$に関する数学的帰納法で示す.

$n=1$のとき,$a_1=21$は$7$の倍数.

$n=k$のとき,すなわち$a_k$が$7$の倍数であると仮定すると
\[ \begin{aligned}a_{k+1}&=19^{k+1}+(-1)^k2^{4k+1}\\ &=19^{k+1}+2\cdot (-1)^k2^{4k}\\ &=19^{k+1}+2\cdot (-16)^k\\&=19\cdot 19^k+(-16)\cdot 2\cdot (-16)^{k-1}\\ &=35\cdot 19^k+(-16)\cdot \{ 19^k+2\cdot (-16)^{k-1}\} \\ &=7\cdot 5\cdot 19^k-16a_k\end{aligned}\]
よって,$a_{k+1}$も$7$の倍数である.

以上より,$\color{red}7$は$a_n$のすべてを割り切る素数である.

さて,ここまで3通りの解答を紹介した.ここからは,この問題をさらに深堀りしていく.

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