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高校数学Problems #3【難易度C 文系 実数・複素数・方程式・数列】

難易度はABCDの4段階です.筆者の主観により難易度を決定していますが,主な基準としては次のようになっています.

難易度主な基準目安
A教科書や標準的な参考書・問題集に掲載されている知識を使って解くことのできる問題教科書・定期試験・共通テスト序盤レベル
B標準的な参考書・問題集に掲載されている,一度解いたことがあれば解くことのできる典型問題とその応用問題共通テスト終盤・標準私立大学・標準国公立大学レベル
C少しの工夫で典型問題に帰着したり,誘導問題を適切に利用することで解くことができる問題難関国公立大学・難関私立大学・医学部レベル
D初見では解法が思いつきにくく,多少の発想力が求められる問題東京一工・早慶・難関医大レベル

すべての問題は以下の18の高校数学の分野・単元でカテゴライズしています(理系数学の内容には下線を付しています).

集合集合と命題(数学I)
整数整数(数学A)
実数実数(数学I)
複素数複素数(数学II),複素数平面(数学C)
方程式2次方程式(数学I),高次方程式(数学II)
恒等式・不等式整式,1次不等式,2次不等式(数学I),恒等式,不等式(数学II)
図形と計量三角比(数学I),初等幾何(数学A)
ベクトルベクトル(数学C)
図形と方程式座標幾何,軌跡,領域(数学II)
2次関数2次関数(数学I)
三角関数三角関数(数学II)
指数対数指数関数,対数関数(数学II)
その他の関数分数関数,無理関数,関数の極限(数学III),2次曲線,媒介変数表示,極方程式(数学C)
数列数列(数学B),数列の極限(数学III)
微分微分(数学II),微分(数学III)
積分積分(数学II),積分(数学III)
場合の数・確率場合の数,確率(数学A)
統計統計(数学I),確率分布(数学B)
問題

$x,y,z$を複素数とする.$x+y+z=47$,$x^2+y^2+z^2=-401$,$x^3+y^3+z^3=-58657$のとき,次の問いに答えよ.

(1) $xy+yz+zx$の値を求めよ.
(2) $xyz$の値を求めよ.
(3) $n$を正の整数とし,$S_n=x^n+y^n+z^n$とする.$S_{n+3}$を$S_n,S_{n+1},S_{n+2}$を用いて表せ.
(4) 関数$f(t)$を$f(t)=t^3-47t^2+1305t-7175$で定めるとき,$f(7)$の値を求めよ.
(5) $x$を実数とするとき,次の式の値を求めよ.
\[ 50(y+z)+\left| \frac{y-z}{2i}\right| \]

(自作問題)

この問題は筆者による自作問題のつもりですが,既に他の方が作問していたり,有名なものだったりするかもしれません.万一そのような情報をご存じの場合は,お手数をおかけしますがお問い合わせフォームよりご連絡いただけると幸いです.

【大学入試】実数の解法
  • 与えられた式を変形する: 式を変形して条件式が使える形に持ち込む
    →展開,因数分解,恒等式を利用する
  • 対称式の基本定理を利用する: 対称式が与えられたとき,基本対称式を考える
    →対称式を基本対称式で表し,基本対称式を計算する
  • 有理数に持ち込む: 無理数がテーマの問題は有理数の話に帰着させる
    →背理法,対偶を考え,有理数を整数比で表す
  • 単純な形に変形する: よりシンプルな式に変形して見通しを良くする
    →分数は分母を払う,根号は累乗して取る,対数は底の指数にして取る
【大学入試】方程式の解法
  • 解の公式を利用する: 1次方程式や2次方程式は純粋に解く
    →いかに速く解を求めることができるかがポイント
  • 因数定理を利用する: 有理根定理や$1$の$n$乗根の代入などで解を1つ見つけて因数分解
    →いかに速く解を見つけられるかがポイント
  • 共役複素数を考える: 実数係数の代数方程式で複素数解を見つけたら,その共役複素数も解
    →一石二鳥で解を見つけられる
  • 微分して解を絞り込む: 微分して増減表を書き,解の存在範囲を絞り込む
    →整数解などを求める際に有効
  • 代数学の基本定理で検算する: $n$次方程式の解の個数は高々$n$個
    →重解とその重複度に注意
  • 非同値変形に注意する: 累乗で根号を消去したり,文字式で割り算するときには要注意
    →十分性の確認を怠らないようにする
  • 解の個数は定数分離: 定数分離してグラフを書き,交点の数を求める
    →数IIIの微分を使うことが多いため文系数学では注意が必要
【大学入試】漸化式の利用
  • 一般項を求める: 数列の一般項を求めて問題を処理する
    →等差型,等比型,階差型,2項間・3項間の特性方程式,対数などを利用する
  • 数学的帰納法で処理する: 漸化式を使って証明する
    →$n=1$の場合を確認し,$n=k$の成立を仮定して$n=k+1$の場合を示す
  • 連立漸化式は数列消去: 1つの数列だけの漸化式を作る
  • 場合分けする: 偶奇や$3$で割ったときの剰余などに注目する
    →それぞれの場合で漸化式を作る
  • 実験する: 初項から順に代入して結果を予測する
    →問題を解く方針を立てる最終手段

与えられた条件式はすべて対称式であること,(1)と(2)は基本対称式の計算であることに注目する.ここは典型的な処理なので確実に正答しておきたい.
(3)が4項間漸化式を作る問題であることに気づけば,(4)の小問の意味するところが想像できるかも.最後の計算は意味深だが・・・.

発想

まずは(1)と(2)について考えよう.基本対称式の処理であるから,典型問題である.

$xy+yz+zx$を求めるときは,次の等式を使う.
\[ (x+y+z)^2=x^2+y^2+z^2+2(xy+yz+zx)\]
ここに分かっている値を代入すると
\[ 47^2=-401+2(xy+yz+zx)\]
これを頑張って計算すると
\[ xy+yz+zx=1305\]

$xyz$を求めるときは,次の等式を使う.
\[ x^3+y^3+z^3-3xyz=(x+y+z)\{ x^2+y^2+z^2-(xy+yz+zx)\} \]
ここに分かっている値を代入すると
\[ -58657-3xyz=47\times (-401-1305)\]
これを頑張って計算すると
\[ xyz=7175\]

ここまでで,基本対称式をすべて得たことになる.

さて,ここからが本題だ.$S_{n+3}$を$S_n,S_{n+1},S_{n+2}$を用いて表すにはどうすればよいだろうか.要するに,漸化式を作る問題である.漸化式の形としては様々考えられるが,最もシンプルな4項間漸化式だと割り切って考えてみることにしよう.つまり
\[ S_{n+3}=AS_{n+2}+BS_{n+1}+CS_n\tag{1}\]
を満たす実数(?)$A,B,C$を求めることを考える.$S_n$の定義より
\[ x^{n+3}+y^{n+3}+z^{n+3}=A(x^{n+2}+y^{n+2}+z^{n+2})+B(x^{n+1}+y^{n+1}+z^{n+1})+C(x^n+y^n+z^n)\]
となるが,両辺ともに$x,y,z$単独の式の足し算の形になっている.ということは,これらの式をバラバラにした
\[ x^{n+3}=Ax^{n+2}+Bx^{n+1}+Cx^n\]
\[ y^{n+3}=Ay^{n+2}+By^{n+1}+Cy^n\]
\[ z^{n+3}=Az^{n+2}+Bz^{n+1}+Cz^n\]
という等式がもし成り立っていれば,形が全く同じ式を3つ足し合わせて得られるのが求めたい漸化式ということになる.よって,$x,y,z$を解に持つような$t$に関する方程式
\[ t^{n+3}=At^{n+2}+Bt^{n+1}+Ct^n\]
を考えてみよう.$xyz\neq 0$より$t\neq 0$であり,両辺を$t^n$で割ると
\[ t^3-At^2-Bt-C=0\tag{2}\]
という$3$次方程式に帰着する.これが$x,y,z$を解に持つのであれば,解と係数の関係から
\[ A=x+y+z=47,B=-(xy+yz+zx)=-1305,C=xyz=7175\]
であることが分かり,$(1)$に代入すると
\[ S_{n+3}=47S_{n+2}-1305S_{n+1}+7175S_n\]
であることが分かる.

偶然にも,4項間漸化式を得ることができた.

次に(4)を考えよう.$f(t)=t^3-47t^2+1305t-7175$という関数は先程の漸化式に似ている.よく見ると,得られた漸化式は
\[ S_{n+3}-47S_{n+2}+1305S_{n+1}-7175=0\]
と変形できるから,$f(t)=0$はこの漸化式の特性方程式である.

とりあえず,$f(7)$を計算してみよう.代入するだけなので計算ミスに気をつけたい.
\[ f(7)=7^3-47\times 7^2+1305\times 7-7175=0\]
つまり,$t=7$は$3$次方程式$f(t)=0$の解であることが分かった.

残るは(5)のみ.$x$が実数であることが明かされるわけだが,よくよく考えると,$(2)$の方程式の解は$x,y,z$であり,この方程式は$f(t)=0$そのものであったから,$f(t)=0$の残りの2解を見つけることができれば,$x,y,z$すべてを求めることができるはずである(もちろん,どれが$x,y,z$に対応しているかは分からない).

因数定理より,$f(t)$は次のように因数分解できることが分かる.
\[ f(t)=t^3-47t^2+1305t-7175=(t-7)(t^2-40t+1025)\]
よって,残りの2解は
\[ t^2-40t+1025=0\]
を解くことで求められる.おとなしく解の公式を使うと
\[ t=20\pm 25i\]
であるから,実数$x$は$7$であることが分かる.ということは,$y,z$は$20\pm 25i$であるから,これらをどうにか代入して
\[ 50(y+z)+\left| \frac{y-z}{2i}\right| =50\times 40+\left| \frac{\pm 50i}{2i}\right| =2025\]
であることが分かった.

解答

(1)(2)
\[ \begin{aligned}xy+yz+zx&=\frac{1}{2}\{ (x+y+z)^2-(x^2+y^2+z^2)\} \\ &=\frac{1}{2}\{ 47^2-(-401)\} ={\color{red}1305}\end{aligned}\]
\[ \begin{aligned}xyz&=\frac{1}{3}[(x^3+y^3+z^3)-(x+y+z)\{ (x^2+y^2+z^2)-(xy+yz+zx)\} ]\\ &=\frac{1}{3}\{ -58657-47\times (-401-1305)\} ={\color{red}7175}\end{aligned}\]

(3) $x,y,z$を解に持つ$t$に関する$3$次方程式を考える.解と係数の関係より
\[ t^3-47t^2+1305t-7175=0\]
を得る.両辺に$t^n$を掛けて
\[ t^{n+3}-47t^{n+2}+1305t^{n+1}-7175t^n=0\]
ここに$x,y,z$を代入して足し合わせると
\[ \begin{array}{rrrrrrr}&x^{n+3}&-47x^{n+2}&+1305x^{n+1}&-7175x^n&=&0\\ &y^{n+3}&-47y^{n+2}&+1305y^{n+1}&-7175y^n&=&0\\ +)&z^{n+3}&-47z^{n+2}&+1305z^{n+1}&-7175z^n&=&0\\ \hline &S_{n+3}&-47S_{n+2}&+1305S_{n+1}&-7175S_n&=&0\end{array}\]
したがって
\[ \color{red}S_{n+3}=47S_{n+2}-1305S_{n+1}+7175S_n\]

(4)
\[ f(7)=7^3-47\times 7^2+1305\times 7-7175={\color{red}0}\]

(5) 因数定理より
\[ f(t)=(t-7)(t^2-40t+1025)\]
であるから,$f(t)=0$の解は$t=7,20\pm 25i$
よって,$x,y,z$は$7,20\pm 25i$のいずれかであるが,$x$は実数であるから$y,z$は$20\pm 25i$である.このとき
\[ y+z=(20+25i)+(20-25i)=40\]
\[ \left| \frac{y-z}{2i}\right| =\left| \frac{\pm 50i}{2i}\right| =25\]
であるから
\[ 50(y+z)+\left| \frac{y-z}{2i}\right| =50\times 40+25={\color{red}2025}\]

この記事の公開年は西暦2025年で,令和7年です.(5)は帳尻合わせのような気もしますが,今年らしい問題に仕上がったと思います.

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