この記事では,2025年度 大学入学共通テストの「数学Ⅰ,数学A」をはじめとする数学①の分析記事です.問題や解答を掲載しているわけではありません.また,速報値ですので,誤った情報が掲載されている可能性があります.
この記事は,2025年1月19日に公開・随時更新していき,数学①の本試験・追試験合わせて計8科目の試験の分析を掲載します.また,2025年1月末から2月初め頃に確定版の記事として再公開します.
基本情報
- 試験: 令和7年度 大学入学共通テスト 本試験
- 出題教科: 数学①
- 出題科目: 数学Ⅰ,数学A
- 試験時間: 70分
- 満点: 100点
- 実施日時: 2025年1月19日(日)13:00~14:10
- 出題内容・出題形式: 以下の通り(※難易度はMathAbyssによる主観的な情報です)
大問構成 | 出題分野 | 配点 | 難易度(昨年比) | 備考 | |
第1問 | 1 | 数と式 | 30 | やや易化 | |
2 | 図形と計量 | 変化なし | |||
第2問 | 1 | 2次関数 | 30 | 変化なし | |
2 | データの分析 | やや難化 | |||
第3問 | 図形の性質 | 20 | やや難化 | ||
第4問 | 場合の数と確率 | 20 | やや難化 |
昨年度との大きな変更点
昨年度までは大問数が5であり,第1問(数と式,図形と計量),第2問(2次関数,データの分析)は必答問題,第3問(場合の数と確率),第4問(整数の性質),第5問(図形の性質)は選択問題で,2問を選択して答える形式であった.今年度から第4問の「整数の性質」に関する大問が削除され,第3問が「図形の性質」,第4問が「場合の数と確率」に関する問題となり,第3問,第4問が必答問題となった.
総合分析
MathAbyssでは,全体的に「やや難化」したと評価しています.新課程の影響でこれまでとは異なる新傾向の問題が多く出題されました.特にその影響が大きかった第2問と第4問は難化し,昨年度までは選択問題だった「整数の性質」が削除された影響により必答問題となった第3問も空間図形が登場し,やや難化しました.SNS上でも全体的にやや難化したとの声が散見されています.平均点は昨年の51.38点よりもさらに下がったのではないでしょうか.
大問数は大学入試センターが令和4年度に公開した試作問題と同様で,全問必答となりました.第1問と第2問は,それぞれ中問が2つの構成になっています.
ページ数は27ページで,昨年度の25ページと比べて2ページ増加しました.選択形式の問題が,昨年度は13~20個(大問の選択によって異なる)であったのに対し,今年度は20個でした.
設問別分析
第1問
1
数と式に関する問題が出題されました.2次方程式が題材です.昨年度より計算量は減少したと思われるため,「やや易化」と評価しています.
$a,b$を実数とし,$x$の$2$次方程式
\[ (2a+4b-2)x^2+(5a+11)x-b=0\]
を考えます.
(1)では$a=1$の場合を考え,因数分解して$b$によらない解を求めます.
(2)では$b=2$の場合を考え,(i)では因数分解し,(ii)では$a=2\sqrt{2}$として解を求めます.(iii)では$a$の条件が解の条件の必要条件か十分条件かを問う定番の問題です.
2
図形と計量に関する問題が出題されました.対話形式の問題でした.昨年度のような三角比の表を用いる問題がなく,最後の問題の計算量も減少しましたが,処理する量は少し増加したため,「変化なし」と評価しました.
直線$\ell$上に2点$\rm A,B$をとり,$\ell$に$\rm A$で接する中心$O$半径$2$の円と,$\rm B$で接する中心$O^{\prime}$半径$4$の円を考えます.$\rm O,O^{\prime}$は$\ell$に関して同じ側にあり,2つの円の交点2つを$\rm P,Q$とします.$\rm \angle APB<\angle AQB$であり,$\angle PAB$は鋭角です.
(1)では$\alpha=\angle \mathrm{PAB},\beta =\angle \mathrm{PBA}$とします.$\rm O$から辺$\rm AB$に下ろした垂線の足を$\rm H$とし,誘導により$\rm PA,PB$の長さを$\alpha ,\beta$を用いて表します.これを利用して,$\triangle \rm PAB$の外接円の半径$R_1$を正弦定理により求めます.途中で選択形式の問題が2問ありました.
(2)では太郎さんと花子さんが登場し,$\triangle \rm QAB$の外接円の半径を求めるという方針が示唆されます.ここでも選択形式の問題が2問ありました.
(3)は(2)の続きで,$\rm AB=2\sqrt{7}$として$\rm PA,PB$の長さを求めます.
第2問
1
2次関数に関する問題が出題されました.噴水を題材とした対話形式の問題でした.昨年度と変わらず処理する量が多いため,「変化なし」と評価しました.
太郎さんと花子さんの会話から始まり,3つの噴水の水の軌跡を放物線とみなし,座標軸を設定します.
(1)は与えられた条件(仮定)から2次関数を決定し,頂点の座標を求める典型的な処理でした.最後の1問は選択形式の問題でした.
(2)は大きい噴水の放物線の高さを,「他の2つの噴水の放物線の頂点を通る」条件を満たしながら変える場合について考える問題でした.最後の1問は選択形式の問題で,処理すべき量が多い問題でした.
2
データの分析に関する問題が出題されました.新課程で追加された仮説検定に関する問題や,外れ値に関する問題が出題されました.新課程の影響を受け,新傾向の問題も多く,戸惑った受験生も多かったことでしょう.一概に昨年度と比較することはできませんが,処理すべき量は増加したと思われるため,「やや難化」と評価しました.
47都道府県における外国人宿泊者数と日本人宿泊者数の動向がテーマとなりました.
(1)の(i)ではその散布図が与えられ,そこから読み取れる記述の正誤を選択する問題でした.(ii)では外れ値について考える問題で,四分位範囲から外れ値の数を求める問題が出題されました.
(2)では分散の変量変換が問われ,相関関係から分散に関する不等式を選択する問題が出題されました.選択形式の問題2問で構成されていました.
(3)では仮説検定に関する問題が出題されました.35枚の硬貨を投げたときの表が出た回数の分布から,仮説を棄却するかどうかを問う問題でした.ここでは選択形式の問題が2問ありました.
第3問
図形の性質に関する問題が出題されました.五面体に関する問題が出題され,方べきの定理を用いて得問題がありました.あまり見られない五面体に関する問題であったことと,計算量と処理量の多さから,「やや難化」と評価しました.
2つの三角形($\rm ABC$と$\rm DEF$)と3つの四角形($\rm ABED$と$\rm BCFE$と$\rm CADF$)からなる五面体を考えます.
(1)では$\rm AD,BE,CF$が1点で交わることの証明についての出題でした.2つの空欄に当てはまるものを選択肢の中から選ぶ問題でした.
(2)では$\rm \triangle ABC$が1辺の長さが$3$の正三角形であることと,$\rm AD=7,BE=11,CF=17,DE=9$であること,そして五面体の外接円$S$が存在するという条件が与えられます.また,$\rm AD$と$\rm BE$の交点を$\rm P$とします.
(i)では誘導で相似な三角形を示し,$\rm PA,PB$の長さを求める問題でした.
(ii)では方べきの定理を用いて$\rm PC$の長さを求め,$\rm EF,DF$の長さを求める問題でした.
(iii)では3つの命題が与えられ,その正誤の組合せを選択する問題でした.最も処理量が多い問題でした.
第4問
場合の数と確率に関する問題が出題されました.新課程で追加された期待値に関する問題として,2つの期待値を比較する問題が出題されました.第2問の2と同様,新課程の影響を受け,新傾向の問題も多く,戸惑った受験生も多かったことでしょう.一概に昨年度と比較することはできませんが,計算量は増加したと思われるため,「やや難化」と評価しました.
最大3回のくじを引き,当たりが出たら1200円相当の景品をもらえるというゲームについて考えます.3つの事象の確率が分かっています.
(1)では,与えられた確率の情報から,3つの確率を計算する問題でした.
(2)では,(i)でゲームの主催者が負担する金額の期待値を求め,(ii)でその期待値と参加者が支払う参加料を比較する問題が出題されました.
(3)では別の参加料を設定し,(i)でその期待値を求め,(ii)で主催者が負担する金額の期待値と比較する問題が出題されました.
数学①のその他の出題科目
数学Ⅰ
大問構成 | 出題分野 | 配点 | 難易度(昨年比) | 備考 | |
第1問 | 1 | 数と式 | 20 | やや易化 | |
2 | 集合と命題 | やや易化 | 数学IAにない問題 | ||
第2問 | 1 | 図形と計量 | 30 | やや易化 | 数学IAにない問題 |
2 | 図形と計量 | 変化なし | |||
第3問 | 1 | 2次関数 | 30 | 変化なし | 数学IAにない問題 |
2 | 2次関数 | 変化なし | |||
第4問 | データの分析 | 20 | 変化なし | 数学IAにない問題 |
分析
難易度は昨年と比べて「やや易化」したと評価しました.第1問の1と第2問の2,第3問の2は新課程の問題と共通でした.第1問の2は集合と命題から出題されました.比較的易しい問題でしたが,最後の設問は少し複雑でした.第2問の1は台形を題材とした問題で,こちらも易しい三角比の問題でした.第3問の1は2次方程式の解の配置の典型的な問題でした.第4問は数学IAとほとんど共通の問題でしたが,新課程との差を埋めるために一部改変されています.新課程の内容を旧課程の知識で解くような問題となっていたため,戸惑った受験生も多かったことでしょう.
旧数学Ⅰ,旧数学A
旧教育課程による出題科目については,新教育課程による出題科目と旧教育課程による出題科目を合わせた4科目のうちから1科目を選択し,解答することになっています.
大問構成 | 出題分野 | 配点 | 難易度(昨年比) | 備考 | ||
第1問 | 1 | 数と式 | 30 | やや易化 | ||
2 | 図形と計量 | 変化なし | ||||
第2問 | 1 | 2次関数 | 30 | 変化なし | ||
2 | データの分析 | 変化なし | 数学IAにない問題 | |||
第3問 | 場合の数と確率 | 20 | 変化なし | 数学IAにない問題 | 選択問題 (2題選択) | |
第4問 | 整数の性質 | 20 | 変化なし | 数学IAにない問題 | ||
第5問 | 図形の性質 | 20 | やや難化 |
分析
難易度は昨年とほとんど同様で「変化なし」と評価しました.第2問の2と第3問,第4問以外は新課程の問題と共通でした.第2問の2ではデータの分析に関する問題が出題されました.新課程にはないヒストグラムや箱ひげ図が出題され,昨年とほぼ同様の形式でした.第3問ではじゃんけん大会の確率が題材となり,問題の設定は比較的わかりやすかったでしょう.第4問は新課程で削除された整数の問題でした.不定方程式が題材となった典型的な問題でした.
旧数学Ⅰ
旧教育課程による出題科目については,新教育課程による出題科目と旧教育課程による出題科目を合わせた4科目のうちから1科目を選択し,解答することになっています.
大問構成 | 出題分野 | 配点 | 難易度(昨年比) | 備考 | |
第1問 | 1 | 数と式 | 20 | やや易化 | |
2 | 集合と命題 | やや易化 | 数学Iと同じ問題 | ||
第2問 | 1 | 図形と計量 | 30 | やや易化 | 数学Iと同じ問題 |
2 | 図形と計量 | 変化なし | |||
第3問 | 1 | 2次関数 | 30 | 変化なし | 数学Iと同じ問題 |
2 | 2次関数 | 変化なし | |||
第4問 | データの分析 | 20 | 変化なし | 数学Iと同じ問題 |
分析
難易度は昨年とほとんど同様で「やや易化」と評価しました.第1問の1,第2問の2,第3問の2は新課程の「数学Ⅰ,数学A」の問題と共通で,それ以外は新課程の「数学Ⅰ」と共通の問題でした.
追試験<追試験終了後更新>
数学Ⅰ,数学A
数学Ⅰ
旧数学Ⅰ,旧数学A
旧数学Ⅰ
2026年度 大学入学共通テストに向けて
昨年度のデータ
数学①の本試験における基本データ
教科 | 科目 | 受験者数 | 平均点 | 最高点 | 最低点 | 標準偏差 |
数学 | 数学Ⅰ | 5346 | 34.62 | 94 | 0 | 16.69 |
数学Ⅰ,数学A | 339152 | 51.38 | 100 | 0 | 20.73 |
数学①の本試験における受験者数・平均点の推移
教科 | 科目 | 2021年度 第1日程 | 2021年度 第2日程 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
数学 | 数学Ⅰ | 受験者数 | 5750 | 44 | 5258 | 5153 | 5346 |
平均点 | 39.11 | 26.11 | 21.89 | 37.84 | 34.62 | ||
数学Ⅰ,数学A | 受験者数 | 356492 | 1354 | 357357 | 346628 | 339152 | |
平均点 | 57.68 | 39.62 | 37.96 | 55.65 | 51.38 |
2026年度の変更点
現在のところ,大きな変更点はありません.