数列の単調性と同様に,関数の単調性を考えることができる.
関数の単調性
$A$を$\mathbb{R}$の空でも1元集合でもない部分集合,$f:A\to \mathbb{R}$を関数とする.関数の単調性は,次の4つに分類できる.
狭義単調増加 | $\forall x_1,x_2\in A,x_1<x_2\implies f(x_1)<f(x_2)$ |
狭義単調減少 | $\forall x_1,x_2\in A,x_1<x_2\implies f(x_1)>f(x_2)$ |
広義単調増加 | $\forall x_1,x_2\in A,x_1<x_2\implies f(x_1)\le f(x_2)$ |
広義単調減少 | $\forall x_1,x_2\in A,x_1<x_2\implies f(x_1)\ge f(x_2)$ |
$A$を$\mathbb{R}$の空でも1元集合でもない部分集合,$f:A\to \mathbb{R}$を関数とする.
- 任意の$x_1,x_2\in A$に対して,$x_1<x_2$ならば$f(x_1)<f(x_2)$が成り立つとき,$f$を狭義単調増加関数(strictly monotonically increasing function)(または狭義増加関数(strictly increasing function))といい,$f$は狭義単調増加(strictly monotonically increasing)(または狭義増加(strictly increasing))であるという.
- 任意の$x_1,x_2\in A$に対して,$x_1<x_2$ならば$f(x_1)>f(x_2)$が成り立つとき,$f$を狭義単調減少関数(strictly monotonically decreasing function)(または狭義減少関数(strictly decreasing function))といい,$f$は狭義単調減少(strictly monotonically decreasing)(または狭義減少(strictly decreasing))であるという.
- 任意の$x_1,x_2\in A$に対して,$x_1<x_2$ならば$f(x_1)\le f(x_2)$が成り立つとき,$f$を広義単調増加関数(weakly monotonically increasing function)(または広義増加関数(weakly increasing function))といい,$f$は広義単調増加(weakly monotonically increasing)(または広義増加(weakly increasing),非減少(non-decreasing))であるという.
- 任意の$x_1,x_2\in A$に対して,$x_1<x_2$ならば$f(x_1)\ge f(x_2)$が成り立つとき,$f$を広義単調減少関数(weakly monotonically decreasing function)(または広義減少関数(weakly decreasing function))といい,$f$は広義単調減少(weakly monotonically decreasing)(または広義減少(weakly decreasing),非増加(non-increasing))であるという.
関数$f:(0,1)\to \mathbb{R}$を
\[ f(x)=x^2\quad (x\in (0,1))\]
により定めるとき,$f$は狭義単調増加である.実際,任意の$x_1,x_2\in (0,1)$に対して,$x_1<x_2$ならば
\[ f(x_1)=x_1^2<x_2^2=f(x_2)\]
が成り立つ.
関数$f:\mathbb{R}\to \mathbb{R}$を
\[ f(x)=|x|-x\quad (x\in \mathbb{R})\]
により定めるとき,$f$は広義単調減少である.実際,任意の$x_1,x_2\in \mathbb{R}$に対して,$x_1<x_2$ならば
- $x_1<x_2<0$のとき
\[ \begin{aligned}f(x_1)&=|x_1|-x_1=-x_1-x_1=-2x_1\\ &>-2x_2=-x_2-x_2=|x_2|-x_2=f(x_2)\end{aligned}\]
が成り立つ. - $x_1\le 0\le x_2$のとき
\[ \begin{aligned}f(x_1)&=|x_1|-x_1=-x_1-x_1=-2x_1\\ &>0=x_2-x_2=|x_2|-x_2=f(x_2)\end{aligned}\]
が成り立つ. - $0<x_1<x_2$のとき
\[ \begin{aligned}f(x_1)&=|x_1|-x_1=x_1-x_1=0\\ &=x_2-x_2=|x_2|-x_2=f(x_2)\end{aligned}\]
が成り立つ.
以上より,$f$が狭義単調減少でないことも分かる.
関数の単調性と微分
関数の単調性は,次の定理を利用して判定することができる.
$I\subset \mathbb{R}$を開区間,$f:I\to \mathbb{R}$を$I$上微分可能である関数とする.
- 任意の$x\in I$に対して$f^{\prime}(x)=0$ならば,$f$は定数関数である.
- 任意の$x\in I$に対して$f^{\prime}(x)>0$ならば,$f$は狭義単調増加関数である.
- 任意の$x\in I$に対して$f^{\prime}(x)<0$ならば,$f$は狭義単調減少関数である.
- 任意の$x\in I$に対して$f^{\prime}(x)\ge 0$ならば,$f$は広義単調増加関数である.
- 任意の$x\in I$に対して$f^{\prime}(x)\le 0$ならば,$f$は広義単調減少関数である.
証明には平均値の定理を用いる.
$f$は$I$上微分可能であるから,$f$は$I$上連続である.
$a,b\in I$を$a<b$となるように任意にとると,$f$は$[a,b]$上連続かつ$(a,b)$上微分可能であるから,平均値の定理より,ある$c\in (a,b)$が存在して
\[ f^{\prime}(c)=\frac{f(b)-f(a)}{b-a}\]
となる.$b-a>0$に注意する.
- $f^{\prime}(c)=0$であるから,$f(a)=f(b)$
したがって,$f$は定数関数である.$\blacksquare$ - $f^{\prime}(c)>0$であるから,$f(a)<f(b)$
したがって,$f$は狭義単調増加関数である.$\blacksquare$ - $f^{\prime}(c)<0$であるから,$f(a)>f(b)$
したがって,$f$は狭義単調減少関数である.$\blacksquare$ - $f^{\prime}(c)\ge 0$であるから,$f(a)\le f(b)$
したがって,$f$は広義単調増加関数である.$\blacksquare$ - $f^{\prime}(c)\le 0$であるから,$f(a)\ge f(b)$
したがって,$f$は広義単調減少関数である.$\blacksquare$