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合成写像

写像に関する演算の1つである,写像の合成について解説する.


写像の合成

合成写像の定義

2つの写像から,1つの写像を構成する方法として,写像の合成がある.

定義1

$X$を集合,$Y,Z$を空でない集合とし,$f:X\to Y$を写像とする.また,$P$を$f(X)$を含む集合とし,$g:P\to Z$を写像とする.
\[ h(x)=g(f(x))\quad (x\in X)\]
により定まる写像$h:X\to Z$を$f$と$g$の合成(composition)といい,$g\circ f$(または$gf$)で表す.
ただし,$\mathrm{id}_{\emptyset}\circ \mathrm{id}_{\emptyset}=\mathrm{id}_{\emptyset}$とする.

任意の写像$f,g$に対して,合成写像$g\circ f$が定義されるわけではない.

$g\circ f$と$f\circ g$の両方が定まるとき,$g\circ f=f\circ g$であるとは限らない.

合成写像は,以下の図1のようなイメージで捉えると良い.

図1:写像の合成

合成写像の例を挙げておく.

例1

写像$f,g:\mathbb{R}\to \mathbb{R}$を
\[ \begin{aligned}f(x)=&2x-1\quad (x\in \mathbb{R})\\ g(x)=&3x+1\quad (x\in \mathbb{R})\end{aligned}\]
により定めると
\[ f(\mathbb{R})=g(\mathbb{R})=\mathbb{R}\]
であるから,$g\circ f:\mathbb{R}\to \mathbb{R}$と$f\circ g:\mathbb{R}\to \mathbb{R}$が定まる.
このとき,任意の$x\in \mathbb{R}$に対して
\[ \begin{aligned}(g\circ f)(x)=&g(f(x))\\ =&g(2x-1)\\ =&3(2x-1)+1\\ =&6x-2\end{aligned}\]
\[ \begin{aligned}(f\circ g)(x)=&f(g(x))\\ =&f(3x+1)\\ =&2(3x+1)-1\\ =&6x+1\end{aligned}\]
が成り立つ.

写像の反復

写像の合成を繰り返し行うときには,次のような表記が便利である.

定義2

$f$を像が定義域に含まれるような写像とする.
\[ \begin{aligned}f^0=&\mathrm{id}\\ f^n=&f^{n-1}\circ f\quad (n\in \mathbb{N})\end{aligned}\]
により定まる写像を$f$の反復(または反復合成反復合成写像繰り返し)(iteration)という.
また,$f$の逆写像が存在するとき,任意の$n\in \mathbb{N}$に対して,$(f^{-1})^n$を$f^{-n}$で表す.

逆写像については,以下の記事を参照していただきたい.

反復合成写像の例を挙げておく.

例2

$X=\mathbb{R}\setminus \{ 0,1\}$とする.
写像$f:X\to \mathbb{R}$を
\[ f(x)=\frac{1}{1-x}\quad (x\in X)\]
により定めると
\[ f(X)=X\]
であるから,$f$の反復が定まる.
\[ \begin{aligned}f^2(x)=&(f\circ f)(x)\\ =&f(f(x))\\ =&f\left( \frac{1}{1-x}\right) \\ =&\frac{1}{1-\frac{1}{1-x}}\\ =&\frac{1-x}{1-x-1}\\ =&1-\frac{1}{x}\end{aligned}\]
\[ \begin{aligned}f^3(x)=&(f^2\circ f)(x)\\ =&f^2(f(x))\\ =&f^2\left( \frac{1}{1-x}\right) \\ =&1-\frac{1}{\frac{1}{1-x}}\\ =&1-(1-x)\\ =&x\end{aligned}\]
であるから
\[ f^n(x)=\begin{cases}x&(n=0,3,6,\dots )\\ \dfrac{1}{1-x}&(n=1,4,7,\dots )\\ 1-\dfrac{1}{x}&(n=2,5,8,\dots )\end{cases}\]
となる.

合成写像の性質

合成写像について,次の命題が成り立つ.

命題1

$X$を集合,$Y,Z,W$を空でない集合,$f:X\to Y$を写像とする.また,$P$を$f(X)$を含む集合,$g:P\to Z$を写像とし,$Q$を$g(P)$を含む集合,$h:Q\to W$を写像とする.

  • $(h\circ g)\circ f=h\circ (g\circ f)$
  • $f\circ \mathrm{id}_X=\mathrm{id}_Y\circ f=f$
  • $f$が全単射ならば,$f^{-1}\circ f=\mathrm{id}_X,f\circ f^{-1}=\mathrm{id}_Y$である.

命題1の③の証明は,以下の記事を参照していただきたい.

  • 任意の$x\in X$に対して
    \[ \begin{aligned}((h\circ g)\circ f)(x)=&(h\circ g)(f(x))\\ =&h(g(f(x)))\\ =&h((g\circ f)(x))\\ =&(h\circ (g\circ f))(x)\end{aligned}\]
    が成り立つから,$(h\circ g)\circ f=h\circ (g\circ f)$である.$\blacksquare$
  • 任意の$x\in X$に対して
    \[ \begin{aligned}(f\circ \mathrm{id}_X)(x)=&f(\mathrm{id}_X(x))\\ =&f(x)\end{aligned}\]
    \[ \begin{aligned}(\mathrm{id}_Y\circ f)(x)=&\mathrm{id}_Y(f(x))\\ =&f(x)\end{aligned}\]
    が成り立つから,$f\circ \mathrm{id}_X=\mathrm{id}_Y\circ f=f$である.$\blacksquare$

命題1より,集合$X$から$X$への写像全体の集合は,写像の合成に関して群をなすことが分かる.
群については,以下の記事を参照していただきたい.

全射,単射の合成について,次の命題が成り立つ.
全射,単射については,以下の記事を参照していただきたい.

命題2

$X$を集合,$Y,Z$を空でない集合とし,$f:X\to Y$を写像とする.また,$P$を$f(X)$を含む集合とし,$g:P\to Z$を写像とする.

  • $f,g$が全射ならば,$g\circ f$は全射である.
  • $f,g$が単射ならば,$g\circ f$は単射である.
  • $f,g$が全単射ならば,$g\circ f$は全単射である.
  • $g$の全射性より,任意の$z\in Z$に対して,ある$y\in Y$が存在して,$z=g(y)$となる.
    また,$f$の全射性より,ある$x\in X$が存在して,$y=f(x)$となる.
    このとき
    \[ \begin{aligned}(g\circ f)(x)=&g(f(x))\\ =&g(y)\\ =z\end{aligned}\]
    となるから,$g\circ f$は全射である.$\blacksquare$
  • $f$の単射性より,任意の$x_1,x_2\in X$に対して,$f(x_1)\neq f(x_2)$である.
    また,$g$の単射性より,$g(f(x_1))\neq g(f(x_2))$すなわち
    \[ (g\circ f)(x_1)\neq (g\circ f)(x_2)\]
    であるから,$g\circ f$は単射である.$\blacksquare$
  • ①,②より,直ちに従う.$\blacksquare$
命題3

$X$を集合,$Y,Z$を空でない集合とし,$f:X\to Y$を写像とする.また,$P$を$f(X)$を含む集合とし,$g:P\to Z$を写像とする.

  • $g\circ f$が全射ならば,$g$は全射である.
  • $g\circ f$が全射かつ$g$が単射ならば,$f$は全射である.
  • $g\circ f$が単射ならば,$f$は単射である.
  • $g\circ f$が単射かつ$f$が全射ならば,$g$は単射である.
  • $g\circ f$の全射性より,任意の$z\in Z$に対して,ある$x\in X$が存在して
    \[ z=(g\circ f)(x)=g(f(x))\]
    となる.
    よって,$g$は全射である.$\blacksquare$
  • $g\circ f$の全射性より,任意の$y\in Y$に対して,ある$x\in X$が存在して
    \[ (g\circ f)(x)=g(y)\]
    すなわち
    \[ g(f(x))=g(y)\]
    となる.
    $g$の単射性より,$f(x)=y$となるから,$f$は全射である.$\blacksquare$
  • $g\circ f$の単射性より,任意の$x_1,x_2\in X$に対して,$x_1\neq x_2$ならば
    \[ (g\circ f)(x_1)\neq (g\circ f)(x_2)\]
    すなわち
    \[ g(f(x_1))\neq g(f(x_2))\]
    である.
    よって,$f(x_1)\neq f(x_2)$であるから,$f$は単射である.$\blacksquare$
  • $f$の全射性より,任意の$y_1,y_2\in Y$に対して,ある$x_1,x_2\in X$が存在して
    \[ y_1=f(x_1),\quad y_2=f(x_2)\]
    となる.
    $y_1\neq y_2$ならば,$x_1\neq x_2$であり,$g\circ f$の単射性より
    \[ \begin{aligned}(g\circ f)(x_1)\neq &(g\circ f)(x_2)\\ g(f(x_1))\neq &g(f(x_2))\end{aligned}\]
    すなわち
    \[ g(y_1)\neq g(y_2)\]
    となる.
    よって,$g$は単射である.$\blacksquare$
命題4

$X$を集合,$Y,Z$を空でない集合とし,$f,f^{\prime}:X\to Y$を写像とする.また,$P$を$f(X)$を含む集合とし,$g,g^{\prime}:P\to Z$を写像とする.

  • $f$が全射かつ$g\circ f=g^{\prime}\circ f$ならば,$g=g^{\prime}$である.
  • $g$が単射かつ$g\circ f=g\circ f^{\prime}$ならば,$f=f^{\prime}$である.
  • $f$の全射性より,任意の$y\in Y$に対して,ある$x\in X$が存在して,$y=f(x)$となる.
    このとき
    \[ \begin{aligned}g(y)=&g(f(x))\\ =&(g\circ f)(x)\\ =&(g^{\prime}\circ f)(x)\\ =&g^{\prime}(f(x))\\ =&g^{\prime}(y)\end{aligned}\]
    であるから,$g=g^{\prime}$である.$\blacksquare$
  • 任意の$x\in X$に対して
    \[ \begin{aligned}g(f(x))=&(g\circ f)(x)\\ =&(g\circ f^{\prime})(x)\\ =&g(f^{\prime}(x))\end{aligned}\]
    が成り立つから,$g$の単射性より,$f(x)=f^{\prime}(x)$である.
    よって,$f=f^{\prime}$である.$\blacksquare$

合成写像の像は,次のように与えられる.
写像の像については,以下の記事を参照していただきたい.

命題5

$X$を集合,$Y,Z$を空でない集合,$A$を$X$の部分集合とし,$f:X\to Y$を写像とする.また,$P$を$f(X)$を含む集合とし,$g:P\to Z$を写像とする.
このとき,次が成り立つ.
\[ (g\circ f)(A)=g(f(A))\]

\[ \begin{aligned}(g\circ f)(A)=&\{ z\in Z\mid {}^\exists x\in A\,\mathrm{s.t.}\,z=(g\circ f)(x)\} \\ =&\{ z\in Z\mid {}^\exists x\in A\,\mathrm{s.t.}\,z=g(f(x))\} \\ =&\{ z\in Z\mid {}^\exists y\in f(A)\,\mathrm{s.t.}\,z=g(y)\} \\ =&g(f(A))\quad \blacksquare \end{aligned}\]

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