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差集合・補集合

集合の演算である差集合と,その派生である補集合についてまとめた.


差集合

定義1

$A,B$を集合とする.$A$の元であって,$B$の元でないもの全体の集合を$A$から$B$を引いた差集合(set difference)(または)(または$B$における$A$の相対補集合(または補集合))といい,$A\setminus B$(または$A-B$)で表す.

次のような概念も導入しておくと便利である.

定義2

$A,B$を集合とする.$A$と$B$の対称差(symmetric difference)$A\triangle B$を次のように定める.
\[ A\triangle B=(A\setminus B)\cup (B\setminus A)\]

例1

集合$A=\{ 1,2,3\} ,B=\{ 2,4,6\}$に対し,$A\setminus B=\{ 1,3\}$である.また,$B\setminus A=\{ 4,6\}$であるから,$A\triangle B=\{ 1,3,4,6\}$である.

補集合

補集合の話をする前に,次の集合の概念を導入しておこう.

定義3

考えている任意の集合を含む集合を全体集合(または普遍集合)という.

集合を論じる際には,全体集合を設定しておくと便利である.

例2

実数の部分集合について議論しているときは,全体集合を$\mathbb{R}$とすればよい.

定義3

$U$を全体集合,$A$を集合とする.$U$の$A$による差集合$U\setminus A$を$A$の補集合といい,$A^c$(または$\overline{A}$)で表す.

$A^c$が集合$A$の補集合を表している場合,$\overline{A}$で$A$の閉包を表し,$\overline{A}$が集合$A$の補集合を表している場合,$A^c$で$A$の閉包を表すことが多い.
当サイトでは,特に断りのない限り,集合$A$の補集合を$A^c$で表し,閉包を$\overline{A}$で表すことにする.

例3

全体集合を$\{ 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10\}$とする.このとき,集合$A=\{ 2,4,6,8,10\}$の補集合$A^c$は次のようになる.
\[ A^c=\{ 1,3,5,7,9\} \]

差集合・補集合のイメージ・意義

差集合のイメージ

2つの集合$A,B$が与えられたとき,$A\setminus B$をベン図で視覚化すると次のようになる.

また,$B\setminus A$は次のようになる.

よって,$A\setminus B\neq B\setminus A$であることがわかる.よって,$A\triangle B$をベン図で表すと,次のようになる.

補集合のイメージ

まず,$U$を全体集合とし,その部分集合$A$を図示してみよう.

このとき,$A^c$をベン図で視覚化すると次のようになる.

差集合・補集合の性質

差集合の性質

まず,差集合には交換律が成り立たない.すなわち,集合$A,B$に対して
\[ A\setminus B=B\setminus A\]
は成り立つとは限らない.これは,先ほどのベン図を用いて確認することができる.

また,次の命題が成り立つ.

命題1

集合$A,B$に対して,次が成り立つ.

  • $A\setminus B=(A\cup B)\setminus B$
  • $A\setminus B=A\setminus (A\cap B)$
  • 以下の同値変形から従う.
    \[ \begin{aligned}&x\in A\setminus B\\ \iff &x\in A\land x\not\in B\\ \iff &(x\in A\lor x\in B)\land x\not\in B\\ \iff &x\in (A\cup B)\setminus B\blacksquare \end{aligned}\]
  • 以下の同値変形から従う.
    \[ \begin{aligned}&x\in A\setminus B\\ \iff &x\in A\land x\not\in B\\ \iff &x\in A\land \lnot (x\in B)\\ \iff &x\in A\land \lnot (x\in A\land x\in B)\\ \iff &x\in A\land \lnot (x\in A\cap B)\\ \iff &x\in A\land x\not \in A\cap B\\ \iff &x\in A\setminus (A\cap B)\blacksquare \end{aligned}\]

命題より,集合$A,B$に対して,$A$から$B$を引いた差集合$A\setminus B$は$A\cap B$と$A\cup B$を用いて表すことができるため,差集合の表記を導入する必要はないように思える.差集合に独自の表記が与えられているのは,それだけ頻繁に用いられるためである.

補集合の性質

命題2

全体集合を$U$とする.集合$A$に対して,次が成り立つ.

  • $(A^c)^c=A$
  • $A\cup A^c=U$
  • $A\cap A^c=\emptyset$
  • $\emptyset ^c=U$
  • $U^c=\emptyset$
  • 以下の同値変形から従う.
    \[ \begin{aligned}&x\in (A^c)^c\\ \iff &x\not\in A^c\\ \iff &x\in A\blacksquare \end{aligned}\]
  • 以下の同値変形から従う.
    \[ \begin{aligned}&x\in A\cup A^c\\ \iff &x\in A\lor x\in A^c\\ \iff &x\in A\lor x\not\in A\\ \iff &x\in U\blacksquare \end{aligned}\]
  • 以下の同値変形から従う.
    \[ \begin{aligned}&x\in A\cap A^c\\ \iff &x\in A\land x\in A^c\\ \iff &x\in A\land x\not\in A\\ \iff &x\in \emptyset \blacksquare \end{aligned}\]
  • 以下の同値変形から従う.
    \[ \begin{aligned}&x\in \emptyset ^c\\ \iff &\forall x\in U,x\not\in \emptyset \\ \iff &x\in U\blacksquare \end{aligned}\]
  • ①,④より$U^c=(\emptyset ^c)^c=\emptyset \blacksquare$
命題3(ド・モルガンの法則)

集合$A,B$に対して,次が成り立つ.

  • $(A\cup B)^c=A^c\cap B^c$
  • $(A\cap B)^c=A^c\cup B^c$
  • 以下の同値変形から従う.
    \[ \begin{aligned}&x\in (A\cup B)^c\\ \iff &x\not\in A\cup B\\ \iff &\lnot (x\in A\lor x\in B)\\ \iff &x\not\in A\land x\not\in B\\ \iff &x\in A^c\land x\in B^c\\ \iff &x\in A^c\cap B^c\blacksquare \end{aligned}\]
  • 以下の同値変形から従う.
    \[ \begin{aligned}&x\in (A\cap B)^c\\ \iff &x\not\in A\cap B\\ \iff &\lnot (x\in A\land x\in B)\\ \iff &x\not\in A\lor x\not\in B\\ \iff &x\in A^c\lor x\in B^c\\ \iff &x\in A^c\cup B^c\blacksquare \end{aligned}\]

ド・モルガンの法則は,3つ以上の集合の和集合,共通部分についても全く同様に成り立つ.

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